フィッティング のあれやこれ ~ペダリング解析~

こんにちは。 野々山です。

今日は、とあるお客様のペダリング解析についてご紹介です。
こちらのお客様がブログに載せてくれて構わないと仰って下さいましたので、色々データも載せて解析していきたいと思います。

ちなみに、Bikefitは行っていないお客様です。
T様ブログ協力ありがとうございます。


お客様情報の補足

こちらのお客様は、Shock Doctorのインソールを既にお使いである。
ペダルをGarmin Vector2をお使いである。
サイクルコンピュータがGarmin 1030である。

年齢は50歳台で男性。

月間200km~300km走る方。
一般的なサイクリストである事。
ちなみに、自転車はMadone9です。


サイクリングロード走行時のデータ

↑の写真
パワーフェーズ = ペダルに力が掛かり始めた角度~終わりの角度について
パワーフェーズピーク = 最大トルクの掛かり始め~終わりについて

↓の写真
プラットフォームオフセット = ペダルを中心に考えた時の中心点からどれくらいズレているか

まずはサイクリングロード時の話から。

この方は利き足が右足という事が分かります。
利き足が右なので、とにかく意識として右足は踏み込む足
左足はリズムを取る足(引き付ける足)となっています。
恐らく、症状として腿が張りやすいという事もあると思います。

ですので、右足のフェーズは8°と早い地点で掛かりだし、終わりも205°と遅い地点までしっかりと踏み込めています。
逆に左足は14°と右に比べて遅い地点で掛かり出し、終わりも197°と早い地点で力が消失しています。

そもそも、、、

左右対称の身体であると仮定して。
左右の足は踏む込む意識(踏み足ベース)をしっかり持ち、足の回転もゆっくり(低ケイデンス)で踏み込んでいれば、同じ位置でトルクが掛かり出し、同じ位置で消失するはずです。

また、下の図を見て下さい。

こちらの図は、ペダリング時のトルクの掛かり出しと使用する筋肉についての関係図なのですが、
トルクの掛かり出しの理想は0°最大トルクは90°となっています。
最近では、最大トルクは120°辺りまでとするデータもあります。

この内容を踏まえて、お客様データに戻ります。

最大トルクは右足が65°~117°
左足は66°~113°

となっていますので、サドル前後の位置は問題なさそうです。

しかし、トルクの掛かり出しが少々遅め
という事で、もう少し早い時点で踏み込む意識を持ってもらう必要があります。
特に左足に関しては、より強く意識を持ってもらうようにしなくてはいけません。

これに付け加えて言うなら、体の歪みもありそうです。
右半身に比べて左半身が前に出ているという事です。
これについては、僕は専門外となりますので身体のメンテナンスを専門に行っている方に相談して下さい。

続いて、プラットフォームオフセットについてです。

右足は±0mmですので全く問題ありません。
しかし、左足はペダル踏み面の中心からクランク方面へ6mmズレた位置を踏んでいるとなっています。

ここに関して、僕個人は膝との連動で見るので数値として全く気にしません。
ですが、お客様のご要望なので今回はあえて言及しておきます。

右足は問題ないのに左足はなぜ??

考えられる内容は以下になります。
1つはクリート取り付け位置がペダルの中心からズレているという事。
もう1つは左足が外反足である可能性です。
※外反足 = 親指側が先に地面に付く事

この問題点を改善する際は、手数を少なく行うのが大事です。
ですので、まずは簡単に行える方からやってみます。

1.左足のインソールを外してCheck! → 足の痛みCheck&オフセットCheck
2.足底に痛みある場合、インソールを入れてクリートの位置調整へ → オフセットCheck
2(1) 足底に痛みがない場合、そのままクリート位置の調整 → オフセットCheck

インソールを外す理由として、ペダルに対して親指(クランク方面)側に強い力が加わっています。
外反足の場合、もともと親指側に強い力が掛かりやすいです。
これにインソールが加わる事によって更に強い力が加わりやすくなるという事です。
しかしこの場合、インソールを入れた時点で足底部や親指側が痛くなる事が多いです。
今回はそういった痛みの報告はありませんので、これは考えにくいです。。。

続いてクリート位置についてです。
データを見る限り、シューズをクランクよりも遠ざける必要があります。
言うなれば、左足のみQファクターを狭くし過ぎという事です。
ですので、クリートをシューズの内側(親指の方)へ移動してあげればOKです。

僕がお客様からデータを見せて頂く際は、こういった部分を見ています。
もちろん、たったこれだけのデータではなくもう少し詳細なデータも見せて頂きますが。。。


こんなデータももらいました

鈴鹿のレースに出た時のデータです。

あれれ?

サイクリングロードの時と全く違うデータですね。
左のパワーの方が出ていて、フェーズに関してはほぼ同じ。

オフセットに関しては、左はマイナス9mm、右はプラス2mmと違った数値になっています。

まず初めにコース環境を考えてみます。
鈴鹿サーキットを自転車で走る際は、コースを左回りに回るという事。
そして、コースは登りと下りが多くを占めるという事。

今回の場合、実はフィッティング上は全く問題にならないのですが、何故こういった事が起こるのか。

考えるにこれは、身体の状態が大きく影響していると思います。


身体の状態とは?

前述の通り、このお客様は良く踏むお客様です。
右のパワーが弱まった1つの要因として、右足の腿が張った状態にあったのではないでしょうか?
鈴鹿サーキットは普段のサイクリングロードよりも登りが多く存在します。

その為、いつも通りペダルを踏んでいると、腿の前側(大腿四頭筋)の張りが出やすくなります。
そのため左足に比べて右足のパワーが低下してしまったと考えられます。

結果として、パワーフェーズは左右でほぼ同じ数値。
右足の仕事分を左足が必要以上に補った結果、左のパワーバランスが上回った結果と言えるのではないでしょうか。

このような状態で走行された際だったので、恐らく左脚に何らかの違和感があったと思われます。

ちなみに冒頭でお話した通り、鈴鹿ではどちらも踏み足でゆっくりペダリングしていた為、同じ位置でトルクが掛かり出し、同じ位置で消失する結果となっています。


オフセットの数値が平地と違った理由

こちらも左回りのコースが影響していると僕は思います。

鈴鹿サーキットとサイクリングロードの大きな違いは、バイクを倒すシーンが多くある事。
今回の鈴鹿サーキットのコーナー数は左7回、右7回とあります。(湾曲に違いはあります)
このコーナーが多い結果、左右のペダルに掛かる力が右にプラス2mmだけ寄っていたという話。

ですので、左はマイナス方向へ2mm。右はプラス方向へ2mmという事です。
この2mm分取り除くと、実は左右差はサイクリングロードの時と何一つ変わらないという結果になっています。


解析結果

今回のお客様のデータを見させて頂いた結果、僕はフィッターとしてお客様へアドバイスはすれども特に何もしない!という結果になりました。

Qファクターはあくまで膝との連動。
膝に痛みが出ているならこの部分は改善します。
しかし、そうでないなら行う必要はないのです。

アドバイスは、左ペダリングのトルクを掛け出す位置を早める事を意識するという事。

そして、腿の張りについてです。
腿の張りについては、力いっぱい踏め過ぎているのが原因ですので、サドルを後ろに後退させます。
サドルを後退する理由は、

  1. フェーズの掛け出しを0°からにしたい。
  2. フェーズの最大を極力90°にする事。
  3. フェーズの終了を180°辺りにする事。

以上の3点にあります。

今回のデータでは大体14°くらいから掛け出しているので、サドルを後退する事で0°からフェーズの掛け出しがしやすくなります。
結果として理想とされている0°からのペダリングが行えます。

フェーズの終了地点が200°というのは、トライアスロンやタイムトライアルの方の数値です。
これでは、大腿四頭筋を使い過ぎてしまい、すぐにエネルギー切れを起こしてしまいます。
サドルを引く事により、踏み足に力を入れないようにしつつ、使えていない部分の筋肉を使えるようにします。
これにより、フェーズの終了地点が180°くらいになると思われます。

サドルを後ろに下げるという事で、殿筋(お尻の筋肉)が使えるようになり、引き足も今よりも使えてきます。結果として、腿(大腿四頭筋)の張りも緩和されます。

長文になりましたが、僕はお客様から頂いたデータをこのように運用しています。
フィッティングの話は、複合的な事が多いので、1つ終わったら全て完了!とはなりません。

また、何か面白いネタがあったらご紹介しますね~!

 

本日のブログ担当:野々山

 

Follow me!